
学長、理事長、総長、校長の違いは何なのでしょうか?
また、この中では誰が1番偉いのか、気になる方もいると思います。
大きな違いは、学校を設置する法人を代表する役職か、それぞれの学校をまとめる役職かという点です。私立学校では理事長が法人の経営を担い、学長や校長が各学校の運営を担います。総長は大学などが独自に用いる呼び方で、役割は大学によって異なります。
「理事長がどの学校でも必ず一番上」「総長は学長より上」と一律に決めることはできません。同じ人が理事長と学長を兼ねる大学もあります。
今回は、早稲田大学・慶應義塾大学の例や、総長という呼び方の歴史とともに、違いを見ていきましょう。
学長、理事長、総長、校長の違いは?
まずは、4つの役職を表にまとめました。
| 役職 | 主な役割 | 覚えておきたい点 |
|---|---|---|
| 理事長 | 学校法人を代表し、法人の業務を執行する | ここでは私立学校を設置する学校法人の場合を説明 |
| 学長 | 大学の校務をまとめ、所属する教職員を統括する | 大学の教育・研究を含む運営を担う |
| 総長 | 一部の大学などが用いるトップの呼称 | 学長に相当する場合や、理事長と学長を兼ねる場合がある |
| 校長 | 小学校・中学校・高校などの校務をまとめる | それぞれの学校の運営を担う |

※私立学校法人が複数の学校を設置する場合の簡略図です。国公立学校の組織や、役職の一律の上下関係を示すものではありません。監事・評議員会などは省略しています。
学長、理事長、校長の違いは、上の絵のように「学校を設置する法人」と「その法人が設置する学校」を分けて考えると分かりやすくなります。
私立学校の場合、理事長は法人全体の経営に関わり、学長や校長は、それぞれの大学や高校などの運営に関わる役職です。
理事長は学校法人のトップ?
理事長は、学校法人を代表する役職です。
学校法人とは、私立の学校を設置するために作られる法人です。組織として学校を運営するという点では会社を思い浮かべると分かりやすいですが、株式会社と同じ仕組みではありません。
学校法人には理事会があり、理事長は理事の中から理事会で選ばれます。理事の定数は5人以上、監事の定数は2人以上とされており、評議員・評議員会も置かれます。
ただし、監事や評議員まで理事長の部下というわけではありません。理事会は法人の業務を決定し、理事の仕事ぶりを監督します。監事には業務や財産の状況などを監査する役割があります。
2025年4月施行の改正私立学校法では、業務を進める側と、監視・監督する側の役割が整理されました。「理事長が一人で何でも決める」という理解は正確ではないのです。
参考:文部科学省「私立学校法の改正について(PDF)」「私立学校法の一部を改正する法律等の施行について」
学長、校長、総長は学校法人の下にある学校のトップ?
学長や校長は、それぞれの学校をまとめる役職です。私立学校なら、学校法人が設置する大学や高校などのトップと考えると分かりやすいでしょう。
一般的には、小学校、中学校、高校などのトップは校長。大学のトップは学長と呼ばれます。
学校教育法では大学に学長を置くことが定められています。学長は授業だけを担当する人ではなく、大学の校務をまとめる役職です。
一方、総長は、一部の大学などが使う呼称です。たくさんの学部がある総合大学だから、必ず総長と呼ぶわけではありません。東京大学のように、制度上は学長に当たる人を総長と呼ぶ例もあります。
なお、国立・公立の学校は、上の学校法人の図をそのまま当てはめることはできません。私立か国公立かも分けて考える必要があります。
参考:文部科学省「学校教育法及び国立大学法人法等の改正に関するQ&A」、東京大学「東大史Q&A:なぜ『総長』とよぶのですか?」
学長、理事長、総長、校長で1番偉いのは理事長?

※私立学校法人と、その法人が設置する学校の関係を表す簡略図です。理事長が学校のすべての事項で学長・校長より上だと示す図ではありません。
「誰が1番偉いか」への答えは、学校の仕組みや、何について判断するかによって変わります。
理事長は法人の経営面、学長や校長は各学校の教育を含む運営を担う、という役割分担が基本です。学校法人が大学や高校を設置しているからといって、理事長があらゆる校務を自由に決められるわけではありません。
例えば、新しい教育の取り組みを始めるなら、教育上の必要性と予算の両方を考えます。学長だけ、理事長だけの判断で済むとは限らず、法令やその学校の規則に沿った手続きが必要です。
名前だけで順位を付けず、「法人の代表なのか」「学校の長なのか」「同じ人が兼ねているのか」を見ると、役職の違いを理解しやすくなります。
早稲田大学総長は、理事長と学長の両方?
早稲田大学総長は、理事長と学長の両方の役割を担っています。
早稲田大学は、法人の理事長が、その法人が設置する大学の学長を兼ねる「総長制」を採用していると説明しています。
法人の経営と大学の教育・研究を同じ人がまとめる仕組み、と考えると分かりやすいですね。
ただし、兼任するからといって、他から意見を受けずに自由に決められるわけではありません。早稲田大学にも理事会や監事などがあり、大学は業務や財務に関する監査の仕組みを公表しています。
理事長と学長を同じ人が担うか、別々の人が担うかだけで、学校運営の良し悪しまで決まるわけではないのです。
参考:早稲田大学「自己点検・評価報告書(2024年度、PDF)」「監査による内部統制・ガバナンス機能の強化」
慶應義塾大学も理事長と学長が同じ人?
慶應義塾でも、塾長が理事長と大学の学長を兼ねる仕組みです。
ただし、慶應義塾のトップは、総長ではなく「塾長」と呼ばれます。大学だけでなく、小学校・中学校・高校なども設置する学校法人、慶應義塾のトップという位置付けです。
慶應義塾規約では、塾長が法人の理事長となり、慶應義塾大学の学長を兼ねることが定められています。また、塾長が学長を辞退したときは、別に学長を選ぶという例外もあります。
早稲田の「総長」、慶應の「塾長」のように、呼び方は異なっても、法人の代表と大学の学長を兼ねる例があるということですね。
参考:慶應義塾「情報公開(慶應義塾規約)」「歴代の塾長」
大学は、校長ではなく総長と呼ばれるのはなぜ?
大学の長は制度上「学長」ですが、一部の大学では、歴史を受け継いで「総長」という呼び方を使っています。
明治時代の帝国大学には、分科大学制といって、文科、法科、医科、工科など、分野別の大学がありました。
今の感覚では、分野ごとの大学が一つの帝国大学の中にまとまっていた、と考えるとイメージしやすいでしょう。
それぞれの分科大学には学長がいて、帝国大学全体を束ねる役職が総長でした。1919年には分科大学が学部に変わり、分科大学の学長は学部長となりました。
東京大学は、戦後も従来の呼び方を使うことを決め、現在も総長と呼んでいると説明しています。
こうした歴史は「総長」という名前を理解する手がかりになります。ただ、現在のすべての総合大学に共通する呼び分けのルールではありません。その大学の公式サイトにある「組織図」「役員一覧」「寄附行為・規約」を見ると、名前だけでは分からない役割まで確認できます。
参考:東京大学「1919年の東京大学」「東大史Q&A:総長の呼称について」
