
駅弁大学とは、戦後の教育改革で各地に誕生した新制国立大学を皮肉って呼んだ俗称です。国や大学が使う公式な分類ではなく、対象になる大学の固定された一覧もありません。現在は地方国立大学をまとめて指すネット上の表現として使われることがありますが、相手によっては侮蔑的に受け取られるため、大学や在学生を指して安易に使わないほうがよい言葉です。
駅弁大学って知っていますか?
あまり聞き慣れないですよね。
それもそのはず。駅弁大学は公式用語ではありません。
今回は、駅弁大学とは何か、言葉の由来、一般に挙げられる大学、偏差値ランキングや就職を見るときの注意点についてお話しします。
- 「駅弁大学」は戦後に生まれた俗称で、公式の大学区分ではない
- どの大学を含めるかに統一基準はなく、「39大学」と決まっているわけではない
- 大学の難易度や就職は、俗称ではなく学部・入試方式・就職先などで個別に比較する
駅弁大学とは?
駅弁大学とは、第二次世界大戦後の学制改革で各地にできた新制大学、とくに地方の新制国立大学を皮肉って表した言葉です。もともと「地方国立大学すべて」を正確に分類するための言葉ではありません。
現行記事では「1946年に一県一国立大学が実現した」と説明していましたが、正確には、文部省が1948年(昭和23年)6月に新制国立大学設置の十一原則を決定しました。北海道・東京・愛知・大阪・京都・福岡を特別地域とし、それ以外では同じ府県内の官立学校を統合して一府県一大学を目指す方針でした。
その後、1949年(昭和24年)5月31日に国立学校設置法が制定され、69の新制国立大学が発足しました。文部科学省の『学制百年史』によると、この方針には大学の大都市集中を避け、教育機会を全国に広げる目的がありました。
言葉の由来は、少し慎重に見る必要があります。
『デジタル大辞泉』と『精選版 日本国語大辞典』は、「駅弁を売る駅のある所必ず大学あり」という趣旨から、評論家の大宅壮一が作った言葉だと説明しています。
一方、国立国会図書館が大宅壮一の著作や当時の新聞・年鑑などを調べたレファレンス事例では、その有名な発言の出所は確認できていません。同館が確認した早い用例の一つは、1950年11月21日の東京新聞です。したがって、「大宅壮一の造語と広く説明されているが、元発言の初出は確定していない」とするのが正確です。
いずれにしても、最初から大学を中立的に分類する言葉ではなく、急増した新制大学を皮肉る文脈で使われた言葉です。現在使うと、大学や学生を見下していると受け取られる場合があります。
駅弁大学一覧
駅弁大学には公式な定義がないため、公的に確定した一覧はありません。「県名・都市名を冠する地方国立大学」「1949年前後に旧制の学校を統合して発足した国立大学」など、使う人によって範囲が変わります。
現行記事では、2018年の公開時に次の39大学を「駅弁大学」として挙げていました。元の記事を残すために掲載しますが、これは当サイトが便宜上まとめた例であり、文部科学省などによる公式リストではありません。
| 地域 | 現行記事で挙げていた大学 |
|---|---|
| 北海道 | なし |
| 東北(5大学) | 弘前大学・岩手大学・秋田大学・山形大学・福島大学 |
| 関東(7大学) | 茨城大学・宇都宮大学・群馬大学・埼玉大学・千葉大学・横浜国立大学・山梨大学 |
| 中部(8大学) | 新潟大学・富山大学・金沢大学・福井大学・信州大学・岐阜大学・静岡大学・三重大学 |
| 近畿(3大学) | 滋賀大学・神戸大学・和歌山大学 |
| 中国・四国(9大学) | 鳥取大学・島根大学・岡山大学・広島大学・山口大学・徳島大学・香川大学・愛媛大学・高知大学 |
| 九州・沖縄(7大学) | 佐賀大学・長崎大学・熊本大学・大分大学・宮崎大学・鹿児島大学・琉球大学 |
同じ表に入っていても、大学の沿革、学部構成、研究分野、入試難易度は大きく異なります。「駅弁大学に入っているか」だけで大学の価値や難易度を判断することはできません。
駅弁大学ランキングを偏差値からつけてみた
現行記事では39大学を全学平均偏差値で1位から39位まで並べていました。しかし、出典にしていた外部サイトはすでに終了しており、掲載年や算出過程も現在は確認できません。そのため、古い数値を現在のランキングとして残すのは適切ではないと判断しました。
結論として、「駅弁大学」を大学単位の平均偏差値だけで公平に順位づけすることは困難です。
大学には文系・理系・医療系など異なる学部があり、共通テストの科目数や個別試験の配点も違います。また、偏差値は模試を受けた集団によって変わるため、異なる予備校や年度の数値は単純比較できません。
偏差値を比べる場合は、次の条件をそろえてください。
| そろえる条件 | 確認する内容 |
|---|---|
| 年度・データ元 | 同じ年度、同じ予備校の偏差値を使う |
| 学部・学科 | 大学平均ではなく、志望する学部・学科同士で比べる |
| 入試方式 | 前期・後期、共通テスト配点、個別試験科目をそろえる |
| 公式入試結果 | 募集人数、志願者数、受験者数、合格者数も確認する |
偏差値の意味や母集団との関係は、元の記事からリンクしていた「偏差値と上位何パーセントかの関係は?」でも説明しています。
ランキングだけで志望校を決めず、学べる内容、研究室、資格、学費、通学環境、卒業後の進路を合わせて見たほうが、自分に合う大学を選びやすくなります。
駅弁大学の就職は悪いのか?
「駅弁大学だから就職が悪い」と一括りにはできません。大学・学部、希望する業界、就職地域によって結果が違うからです。
文部科学省と厚生労働省の2026年5月公表資料では、2026年3月卒業の大学生の就職率(就職希望者に占める就職者の割合)は98.0%、国公立大学は97.9%、私立大学は98.1%でした。抽出調査であり、「駅弁大学」と呼ばれる大学だけを集計した数字ではありませんが、少なくとも「地方の国立大学だから就職できない」という断定を裏付ける資料ではありません。地域別では中国・四国地区が98.9%で最も高い結果でした。
大学ごとの就職を調べるときは、就職率だけでなく、卒業者数、進学者数、就職希望者数、主な就職先、勤務地、大学院進学率まで確認しましょう。理工系のように大学院進学者が多い学部では、単純な就職者数だけでは実態を判断できません。
駅弁大学は立地が悪い
元の記事では、地方にある大学から東京や大阪の説明会・面接へ行くと、交通費や移動時間がかかる点を挙げました。この負担は、都市部での就職を目指す学生にとって今も確認しておきたいポイントです。
一方で、立地だけで就職の良し悪しは決まりません。地元企業、公務員、教員、医療機関など地域とのつながりが強い大学もあります。志望大学の公式サイトで、キャリアセンターの支援、学内説明会、インターンシップ、卒業生の就職先を確認するのが確実です。
「田舎にいると意識が低くなる」とは限らない
私は東京に住んでいたとき、会社の経営者やモデル・役者を目指す人と知り合う機会があり、地方では出会う人や入ってくる情報の種類が違うと感じました。ここは元の記事を書いた当時の、私自身の率直な体験です。
ただし、その経験から「地方にいる人は意識が低い」と一般化することはできません。地方にも研究、起業、ものづくり、医療、行政など各分野で活躍する人がいます。現在はオンライン説明会やオンラインコミュニティもあり、住む場所だけで得られる情報が決まるわけでもありません。
都市部で働きたい人は、大学名の俗称よりも、次の点を確認するとよいでしょう。
- 希望業界への就職実績とOB・OGの有無
- 都市部でのインターンや面接に参加しやすい日程・費用
- 大学のキャリア支援と、自分から情報を取りに行ける環境
駅弁大学に在学している私の感想
元の記事を書いた当時、私は地方の県庁所在地にある大学に在学していました。娯楽や新しい人と出会う機会が少ないと感じ、「駅弁大学にきたことを後悔している」と率直に書いています。
その気持ちは、当時の個人的な経験として残します。ただ、すべての学生が同じように感じるわけではありません。落ち着いて勉強できる、生活費を抑えやすい、地域に密着した実習や研究ができるなど、地方の大学生活に魅力を感じる人もいます。
大学生活を楽しめるか、起業や希望する仕事を目指せるかは、「駅弁大学」と呼ばれるかどうかだけでは決まりません。大学を選ぶときは、次の項目を自分の希望と照らし合わせてください。
- 学びたい学部・研究室があるか
- 学費と一人暮らしを含む生活費はいくらか
- キャンパス周辺の生活が自分に合うか
- 希望する業界・地域への就職実績があるか
- オープンキャンパスで学生や教員の雰囲気を確認できたか
まとめると、駅弁大学は公式な大学区分ではなく、戦後の新制大学を皮肉って生まれた俗称です。固定された一覧や客観的な序列はありません。偏差値や就職を比べたい場合は、俗称ではなく、同じ年度・同じデータ元の学部別情報と各大学の公式な進路実績を確認しましょう。
